恩田陸 『黄昏の百合の骨』

 とても恩田陸らしい、期待通りの1冊でした。
 『麦の海に沈む果実』のその後の理瀬の物語で、理瀬の父親のあの人なんかもちょっと出ていたり。また『麦の〜』を読み返したくなりますね。
 前作のあの湿原のイメージとか、現実感の無さも凄く好きだったのですが、今回もいいですね。『麦の〜』に比べれば地に足が着いた感じもありますけど、それでもどこかファンタジー的な空気があるんですよね。
 多分前作よりも「地に足が着いた感じ」というのは、舞台となっている場所の問題だけでなく、主人公である理瀬が「安定している」ことにも原因があるんでしょうね。逆に理瀬以外の登場人物の多くが不安定な何かを持っている人物でも、読者の視点になる理瀬の部分が終始一貫して安定していたということは言えると思います。


 その反面、こちらの予測を裏切るほどの展開も無かったのは事実かもしれません。特に前作ではラスト、読者を置いてけぼりにするほどのカタストロフィを伴う急展開でしたからねぇ。謎のアレの正体も、一部は想像していた通りでした。でも最近恩田作品ではこのネタ多いですね。
 でも物足りなさとかは私は感じませんでした。途中の展開が一本調子では無いので、恩田作品ならではの最後まで気を抜けない引っ張り方ですし。


 理瀬の「その後」の物語、この後もありそうなのでその辺も楽しみですね。