トミー&タペンスのシリーズの短編集。
割と冒険色の強いシリーズの中で、これは「探偵物」の直球勝負ですね。
短編集ということでちょっと読むのを後回しにしていて、シリーズ最終作の『運命の裏木戸』より後に読むことになったのですが、一気に二人が若い時代の話に戻っていて楽しかったです。老年になっても若々しい二人には笑いをさそわれますが、若い時代のはじけっぷりはやはり凄いです。
『秘密機関』の事件の後、国の諜報機関に勤めることになったトミーが、長官の命令で半年の休暇を取って、探偵事務所をはじめる。当然そこにはワクワクするようなことの大好きなタペンスが一緒にいて、二人で次々に事件に当たって成果をあげるわけですが。
ですが、ただ普通に探偵をやるのではなく、毎回毎回ホームズやブラウン神父、ソーンダイク博士、探偵アノー、隅の老人、ロジャー・シェリンガムなど、様々な名探偵になり切っているけれどなり切れないトミーの様子が楽しいです。
また、短編集と言っても二人の探偵稼業の真の目的は、国の諜報機関の仕事が絡んでいるので、時折その任務に繋がる話が入っているので、トミー&タペンスの一時代を描いたひとつの作品群として一気に読めてしまいます。
このシリーズ、あと読んでいないのは『親指のうずき』だけとなりました。
読むのが勿体無いような気もしますが、とりあえず買っておこうと思います。