加納朋子 『てるてるあした』

てるてるあした

『ささらさや』の姉妹編というか、続編的な読み方も楽しめた1冊。
やはり描写される心象風景の美しさ、優しさ、それに尽きると思います。
『ささらさや』では、サヤと幽霊の夫が中心にいたわけですが、今回は主人公は中学を卒業したばかりの照代と、彼女が居候した家に出る少女の幽霊です。
サヤというのは、とにかく信じられないくらい素直で愛すべき女性だったのに対し、本作の主人公の照代はこの年代の少女なら誰もが感じたことのあるコンプレックスや妬みというものに凝り固まって、けれども未熟ゆえにやはり愛すべき存在として描かれています。
前作でのサヤも、本当に愛すべき女性として描かれていて彼女の悩みに感情移入させられる部分はありましたが、本作での照代に対してはそれ以上に感情移入をさせられてしまいます。
多分それは、照代が非常に未成熟で欠点が明らかだから、けれどもそれを描く視点が非常に優しい大人の目だからなのでしょう。

前作で登場した三人の老婆やエリカさんなど、佐々良に住む心優しい住人達が本当に生き生きと描かれています。
そして照代が迷うたびに送られる、彼女を励ますかのようなやさしい、そして短いメール。
ラストでは切ない別れもありますが、それを乗り越えて大きく成長する少女の姿が清々しい1冊でした。