モーリス ルブラン(原作)/南 洋一郎(文) 『奇巌城 シリーズ怪盗ルパン』

奇巌城 (シリーズ怪盗ルパン)

 今年はルパン誕生100年だそうで。
 この『奇巌城』、確か大人向けの創元推理文庫では読んでいるのですが、イマイチ入り込めず、昔懐かしのポプラ社のもので今回読み直しました。
 児童書として書かれているポプラ社のこのシリーズ、他に乱歩やホームズものが昔単行本で出ていたのですが、そちらは絶版。そしてソフトカバーで復刊したのがこのシリーズということになります。

 こうして読み返すと、確かに子供向けで書かれた方が面白いなというのが正直な印象。
 言葉が平易になっていることもありますが、かなり意訳、というよりはリライトしたので子供向けの冒険活劇として楽しめるものになったのでしょうね。
 ただし本作、非常にドラマチックな物語ではありますが、陳腐さとギリギリ紙一重、といった感もあります。また、ホームズファンにはやはり今ひとつ勧められないですね。完全に端役で、しかも憎まれ役です。
 物語の性質上ルパンの視点ではなく、主として高校生名探偵イジドールの視点で話は進むのですが、個人的にはその辺りで物語に中々入り込めなかったなという部分はあります。
 また、邦題の『奇巌城』も、非常に魅力的なタイトルではありますが、内容をストレートに表しているという点では、原題の「空洞の針」の方がそのものずばり、という気はしました。