小説家の「私」を主人公に据えた、不思議な連作短編集です。
現在と過去が入り混じった各作品は、生々しい現実の中にありながらも「どこか違和感を感じる」グロテスクな幻想要素が入り込んでいます。それは日常的であるからこそ際立つグロテスクさで、他の多くの小川作品でも見られる類のものだといえるでしょう。
明確にホラーではなく、ひっそりと息づく畸形だからこその美しさのようなものを書かせると、この作家は本当に上手いなと思わされます。
生々しい日常を丁寧に書いているからこそ、荒唐無稽でグロテスクな要素を書き込んでも、それをリアルに感じてしまう、そんな作品集です。
それぞれの物語の時間軸を繋げない構成も、むしろ主人公の「私」という人間を浮かび上がらせる絶妙の効果を持っていたように思えました。
