北森鴻 『写楽・考 蓮丈那智フィールドファイルⅢ』

写楽・考


 どうやらしらないうちにドラマ化されていたのは見逃していたらしい、異端の女性民俗学者蓮丈那智のシリーズの3冊目。
 今回も全4編、非常にクオリティの高い中・短編集でした。

 ミステリと民俗学の融合ということでは、実に各作品とも上手く処理されており、事件においても民俗学上の解釈においても、アクロバティックな論理で鮮やかに解かれていく楽しさは文句のつけようが無し。
 民俗学の解釈については、一歩間違えればトンデモ系にしかならないようなものを、しっかりとした説得力を持って展開されるので、読後にこの結末の意外性が非常に強い印象を残します。
 登場人物もシリーズ・キャラクターとして定着してきており、いい味が出ていますね。
 別シリーズの主人公である旗師の宇佐見陶子の関わりなどもとても楽しめました。