[読了] ダン・ブラウン 『ダヴィンチ・コード 上/中/下』

ダ・ヴィンチ・コード(上)ダ・ヴィンチ・コード(中)ダ・ヴィンチ・コード(下)

 まだまだブームは続いている『ダヴィンチ・コード』ですが、エンターテインメント色を強く上手い具合に構成した歴史のトンデモ系と言ってしまっても過言ではないでしょう。
 次々に現れ、また解き明かされる暗号は確かに面白いのですが、どうしてもキリスト教文化という面では造詣の浅い日本人にはハンディがあるし、ミステリとして読者が一緒に考えて謎を解いていくという形式を期待するのは難しいと言わざるを得ません。
 ただ、そして次々に明らかになるキリスト教社会の根幹に関わる秘密という、下手をすれば薀蓄モノに終始してしまいそうな題材を、逃亡と謎解きのスリリングさを上手く組み合わせて非常にエンターテインメント色の強い作品に仕上げたところが、本作が広く読まれた要因でもあるのでしょう。(同じように改竄された歴史を解き明かし、隠された史実を浮き彫りにするというテーマを扱いつつ、今ひとつブームの広がりの無い高田崇史のQEDとの差はその辺りでしょうか。)
 実は昨年あたりにTVで放映された特集を見てしまったので、ネタの肝心な部分はかなり知ってしまっていたので特にサプライズも無かったりはするのですが、地理的な移動のダイナミズムもありますし、映画向きな展開の作品であるのは確かだと思います。
 たまたま昨年、日本で開催されたダヴィンチの「レスター手稿」の展示も見てきていたこともあって、それなりに楽しめました。