フランセスカ・ワイズマン 『迷い子たちの長い夜』

迷い子たちの長い夜

 変装していた人気のモデルがロンドンで片目を抉られ殺された事件を担当した、刑事のスモールボーン、何かを隠しながらひっそりと生きる母親に連れられて郊外の田舎町で暮らし、後に周囲の理解が得られずに施設へと追いやられるキット、親元で生活できない子供たちを集めた施設でマークとの幼い恋を育むミランダ。
 本書は、これらの三者それぞれを中心視点に据え、やがて1980年に起こる人気モデルの殺人事件へと結び付くための物語です。

 細かく裁断されたシーンの繋ぎ合わせであるため、今一歩どの視点にも感情移入出来ずに、集中し始める前に次の視点へと移りますし、主要登場人物の三人の関係や冒頭で起こる事件との関連性、そして物語の全体像が中々見えて来ないため、かなり退屈な展開に感じてしまいます。
 終盤になってこれらが繋がり、全体の絵が見えてもそれほどのサプライズはありませんし、物語の評価としても難しいところ。
 それでも、どこか淡々とした書き込みは成功していますし、20年という作中の時代を上手く描いたと言うことは出来るでしょう。
 とは言え、あまり救いの無い話なのも事実。何となくもやもやとした読後感の残る1冊でした。