綾辻行人 『びっくり館の殺人』

びっくり館の殺人

 子供向けを意識して書かれるミステリーランドのレーベルでの館シリーズということで、どういったテイストになるのかと思っていたら、物凄く館シリーズらしい要素を持った作品でした。(個人的にはシリーズ第1期のオマケ的な暗黒館よりも、正統派の館シリーズではないかという気がします)
 多少字が大きくてルビが振ってあることの他には、あまりあからさまな「子供向け」という色彩は見えませんし、十分「かつて子どもだった」読者をターゲットに出来るレベルのものだと言えるでしょう。

 ただ、全体的に若干の甘さがあるのか、おそらく子供が読んでも拍子抜けの終わり方だと感じるかもしれないなというのは正直なところ。トリックそのものも、ミスリーディングの仕方も、今ひとつ鮮やかな切れ味を期待すると物足りない感じがあります。
 「びっくり館」という館の雰囲気は確かに面白かったのですが、その舞台立てが事件にもっと活用されていればという部分もありました。

 それでもラストの少しホラーテイストを感じさせる終わり方に関しては、綾辻作品の持ち味として悪くありませんし、以前から次回作と一応の予告をされている「奇面館」を示唆するような記述が作中でなされている辺りも、ついついまた期待感を煽られてしまいました。
 何だかんだ言っても、非常に館シリーズらしい1冊だとは思いますし、綾辻作品らしい1冊でもあるのかなと思います。