図子慧 『君がぼくに告げなかったこと』

君がぼくに告げなかったこと
 青春学園ミステリーらしいです。例によって借り物。
 クラスメイトの転落死の謎だとか、主人公の周りで起こる窃盗や失踪など、ミステリ要素は確かにあるのですが、やはり力点は「青春」に置かれた一作。
 息子に関心の薄い父親、義母との不協和音、同級生達との間で一人浮いてしまうような孤独感だとか、十代の少年の孤独感だとか危うさを描いてはいますが、何故か今ひとつ共感を持つには至りませんでした。かなり色々なものを詰め込みすぎて消化不良な印象も。
 その意味では、ミステリとしても青春小説としても、些か成立し切っていないと言わざるを得ないでしょう。
 登場人物の個性という点では、さすがにコバルト出身作家だけあって、こなれている印象は受けます。ただ、いわゆる女性読者向けの「男子校モノ」の色合いもあるので、その辺は読み手を選ぶかもしれません。