乙一 『銃とチョコレート』

銃とチョコレート

 ミステリーランドを純粋に子供向けのレーベルとしてはもはやとらえる人も少ないだろうとは思いますが、さすがに乙一、著者らしい皮肉や如何ともしがたい理不尽さ、そして救いがたい残虐さなども内包しつつ、綺麗に「子供向け風味」の冒険物に仕上げたなという印象。
 ただし、冒険物・あるいはサスペンス的な要素とそれを支える伏線はしっかりしているとはいえ、平仮名の多用に見られるように過剰に「児童書」の体裁を意識して、中途半端にシニカルな大人視点で描かれた「児童書」というテイストは、乙一ファン以外の一般読者にとっては、もしかしたら読み手を選ぶ部分もあるかもしれません。(もっともこの本を買う読者層は、一般書以上に限られているので、そういった心配は無いのかもしれませんが。)
 結末に関しては、多少予定調和的なぬるさも感じますが、綺麗にまとまって、上手い具合に張られた伏線のうえに落ち着いたと言えるでしょう。意外性と言う部分ではやはり弱いものの、著者らしい人物の書き込みの面白さなどはさすがです。
 そして相変わらずこのミステリーランドのレーベルは、装丁が素晴らしいですね。中の挿絵も悪趣味なグロテスクさを感じさせて、乙一の筆致と良く合っていたのでは無いでしょうか。