J・D・ロブ 『魔女が目覚める夕べ―イヴ&ローク5』

魔女が目覚める夕べ―イヴ&ローク〈5〉
 誰からも慕われていた老齢の警官の葬儀で物語りは幕を開ける本作は、最初から犯人に関しては明らかであり、とりわけ大した捻りもサプライズもありはしません。ですが、テンポ良く次々に動いていく展開、終始感じられる黒魔術のあやしい空気、そしてスピリチュアルなものと現実の間で苛立つイブの心情は、非常に上手い具合に描かれていると言えるでしょう。
 何かを知っていそうな関係者は捜査を嘲笑うかのように次々に犯人の手に掛かり、捜査の中でもつれる人間関係も含め、物語の展開は起伏に富んで読み手を引き込む力があります。
 ただ、上司であり警官としての育ての親であるフィーニーとの関係や、死んだ警官にまつわる内部調査の際には見せたイブの――ジレンマを抱えつつもあくまで「警官である」ことに誇りを持っているはずの彼女の、最後の結末の付け方に関しては、少々矛盾(とまではいきませんが)めいた甘さが感じられたのも事実です。