西尾維新 『DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件』

DEATH NOTE アナザーノート ロサンゼルスBB連続殺人事件
 本書は、コミックと言う媒体ではなく、小説と言う媒体で西尾維新だからこそ出来ることをした成果が、かなり良い方に結実した1冊だと言えるでしょう。もっとも、原作コミックにおいて過剰にキャラクターにのみ思い入れをしている層には、おそらく好き嫌いは別れるところかもしれません。それでも独特の西尾節とでも言える語り口は今回はさすがに抑え気味ですし、上手い具合にDEATH NOTEの世界を西尾維新ならではの切り口で描くことに成功したと思えます。
 清涼院流水とのコラボレーションの時もそうでしたが、こういう「遊び」をやらせると非常に切れ味の良いものを書く作家ですね。
 事件現場に残された手掛かりが示すものが明らかになるに知れ、犯人の変質狂的なまでの「挑戦」が見えてくる過程は普通に面白いです。些かこじつけがましくてリアリティを欠くようなやり過ぎ感も途中感じないではありませんでしたが、事件の真相の構造を知ればそれも受け入れられる範囲です。
 また、原作を知っているだろう読者が対象であるからこその事件の真相の仕掛けも非常に巧妙であり、メロを語り手に選んだ点も成功していると言えるでしょう。
 単なるコミックのノベライズではなく、きちんとミステリとして成立している(それでいながら、コミックのノベライズであることを最大限に生かしている)点は、評価に値すると思います。