3冊

リンダ・ハワード 『天使のせせらぎ』

天使のせせらぎ
 作中で出てくる地名"エンジェルクリーク"がそのまま原題になっているわけですが、それを無理に日本語訳で持ってくるのが不思議だなぁという1冊。
 西部開拓時代のアメリカが舞台なので、いわゆる「ハーレクイン・ヒストリカル」という分野の中のさらに「ウェスタン・ヒストリカル」にジャンル分けされるらしいです。
 女性であることに制約の多い時代を舞台にすることで、逆に生き生きとしたヒロインを描くことには成功した感はあります。

リンダ・ハワード 『レディ・ヴィクトリア』

レディ・ヴィクトリア
 日本での翻訳順序はこの通りですがリンダ・ハワードの「ウェスタン三部作」における時系列はこちらが一番最初。『天使のせせらぎ』に出ていたルイス・フロンタラスの若き日のエピソードもあって、シリーズとしての繋がりもしっかりあるようです。
 舞台はアメリカの西部開拓時代の混乱期ですので、当然女性の地位は現代と大きく異なり、搾取されることが当然の存在としてそこに描かれます。その中でも受容する強さや逞しさはあって、馬と銃という、二大アイテムもしっかりと描かれていますし、女性読者の楽しめる西部劇に仕上がった感じ。
 ただし、終盤の展開はかなり詰め込みすぎた印象。

リンダ・ハワード 『ふたりだけの荒野』

ふたりだけの荒野
 時代的には上2作の間に当たり、特に人物上の繋がりも見えませんが「ウェスタン・三部作」のラスト。
 南北戦争末期の政治的な陰謀を、実在の人物を用いていかにもそれらしく描いた、三作の中で最も「ヒストリカル」の面の強い話。
 ただ、前半の主人公たち二人が山小屋で傷の治療のために隠れ済む部分の比重ばかりが大きく、後半のダイナミズムは些かハッピーエンドのための予定調和に過ぎない印象を与えがちなのが残念です。
 いやまぁロマンス小説ですからそれでいいんでしょうけど。