前作『図書館戦争』に比べると、内容的には登場人物の個々の掘り下げと今後の伏線という役割であろう本書は、些かパワーダウンしているという印象を受けます。シリーズを通して前作と比較するならば、前作が非常に動的であったのに対し、本作では「内乱」の言葉が示すように、図書館の内部での闘争が中心となっているため、政治的な駆け引きが重要なファクターであったりと、些か鬱屈した闘争であるということは言えるのかもしれません。
主人公の郁と彼女の上官の常上よりも、彼らの周囲の脇役にスポットを当てている部分も多く、やはり次作以降でシリーズとしてどう動き出すのか、また今回深く掘り下げた登場人物たちをどう生かすのかが焦点になって来るでしょう。
その意味では、この1冊は決して悪くは無いけれども今ひとつ食い足りない印象もあるのですが、本書だけを取り上げて単独での評価をすることは難しいだろうとも思います。
本書の中で登場した架空の書物である『レインツリーの国』も今月の末に出るとのことですし、次巻以降の展開に期待したいところです。