三津田信三 『凶鳥の如き忌むもの』

凶鳥の如き忌むもの
 『厭魅の如き憑くもの』の続編ですが、こちらはホラー色の強い従来の作品よりも本格ミステリ、それも密室もの・人間消失ものに徹した感があります。しっかりとしたロジックとトリックは見事で、本格ミステリという観点から見れば、これまでの著作の中で一番成功しているとも言えるかもしれません。
 十八年前の事件と絡みながら、徐々に純粋に推理によって解き明かされる過程も精緻なものですし、謎そのものの難易度もかなり高く、またその解決も破綻の無いものだと評価できるでしょう。
 ただ、如何せん序盤から神事の説明や民族学的な考察が長く難解なこと、また、人間消失の舞台となる拝殿や島の見取り図などが無いことで、詳細な記述が連ねられているにも関わらず具体的な密室のイメージを思い描き難いことは指摘できるでしょう。
 個人的な好みとしては、この著者の作品内でのホラーとミステリのバランスという点に魅力を感じているので、その面では本作は少々物足りない感じも受けました。それでも、儀式の行われている拝殿からの巫女消失という謎の詩美性も高く、また真相の衝撃度も文句なしに高かった1冊。