リンダ・ハワード 『あの日を探して』

あの日を探して
 町の人々からはクズの一家と蔑まれて過ごした主人公のフェイスの少女時代は悲惨なもので、極めつけに、、母親と町の有力者の男が、それぞれの家族を残したまま姿を消してしまいます。母親の不倫相手の息子のグレイに、仄かな恋心を抱いていたフェイスですが、激怒したグレイに酷い言葉を投げ付けられて一家は町から追い出され、どん底にまで叩き込まれることになります。
 やがて年月を経て社会的に成功し、本当に母親が不倫相手と駆け落ちをしたのかを不審に思ったフェイスは故郷に戻り、自らの手で真実を明らかにしようとします。

 序盤の少女時代から丁寧に描くことで、フェイスと、彼女を気にしながらも酷い仕打ちをするグレイの背景が浮かび上がり、説得力を持った物語になっていると言えるでしょう。また、グレイの母親や妹といった脇役についても十分に掘り下げられている為に、作品全体が深みを持ったものになっています。
 難を挙げるとすれば、母親とグレイの父親の失踪の真相が徐々に明らかになる過程の演出の仕方は非常に上手いのですが、反面で事件の黒幕とも言える人物に関しては、動機・犯行機会の面からすぐに明らかになってしまっているという弱さも指摘できます。ただ、それは脇役にいたるまで登場人物を克明に描き出し、丁寧な伏線が生きているゆえであるとも言えますので、欠点とまでは行かないでしょう。