リンダ・ハワード『心閉ざされて』

心閉ざされて

 アラバマきっての名家の娘のロアンナは、7歳で両親を失くし、やはり同じ事故で母親を亡くした年上の従姉妹のジェシーとともに祖母の家に引き取られますが、この従姉妹の狡猾な意地悪や周囲の無理解から、不遇な少女時代を送ります。唯一慕っていた又従兄弟のウェッブはジェシーの夫となりますが、ロアンナが17歳の時に起こった殺人事件で容疑者扱いをされ、土地を去ります。
 とまぁ、ここまでが序章みたいなもので、内容的にもボリューム的にも、事件の10年後の第三章が物語のメインとなります。
 主人公のロアンナの不遇な中での心情描写や、彼女を目の仇にする従姉妹のジェシー、さらにはロアンナを気に掛けてはいるけれどもジェシーの方へばかり愛情を注いでしまう祖母など、人物の書き込みはかなり丁寧にされているといえるでしょう。
 ただ、事件の真相は最後の最後にようやく明かされるのですが、正直この辺りは登場人物の心情描写に比べればかなり荒っぽい結末にしてしまったのは、残念といえば残念。