ノーラ・ロバーツ 『砂塵きらめく果て』

砂塵きらめく果て
 母を亡くし、父からは離れ、フィラデルフィアで一人レディとしての教育を受けていたセーラは、経済的に成功していたとばかり思っていた父が実は裕福になることなく、自分の所有する鉱山で一人死んでいたことを知ります。凄腕だけれどもどこか危険なガンマンのジェイクには、早く東部へ帰ることを進められますが、彼女は父が残した粗末な家と鉱山を守ってこの地で生きていくことを決心し――。

 アメリカの黎明期、要するに西部劇の世界というのはどうもロマンス小説でも人気のようで。
 いわゆるウェスタン・ヒストリカルにあたる本作ですが、ヒロインの女性像が何とも生活力のあるお嬢様といった感じで、非常に面白かったです。ただ、お相手役であるジェイクがまったく普通の親切な男にしか読めないのに、「冷酷」「危険」といった形容を随所で見かけたのは、人物の書き込みの弱さを指摘せざるを得ないところかもしれません。
 父親の死と、その背景にあったものに関しては、かなり最初の方から予測が付いてしまいますが、その分わかり易い構図でリーダビリティは高いと言えるかもしれません。
 ところでこの話、『ハウスメイトの心得』という別作品での主人公が書いた小説、という、どうも作中作的な設定もあるらしいです。