J・D・ロブ 『ユダの銀貨が輝く夜―イヴ&ローク11』

ユダの銀貨が輝く夜―イヴ&ローク〈11〉
 ロークの所有するクラブで、ひとりの警官が残忍な方法で殺害され、犯行現場には30枚の銀貨と、血に汚れた警官バッジが見つかります。
 状況から見て顔なじみの犯行であると判断して捜査を始めるイブですが、非公式に内部監察部がこの事件に首を突っ込んできたり、殺された警官の所属する128分署との対立する中、かつてロークと繋がりがあった麻薬組織を持つリッカーという男の関与も浮かび上がってきます。
 ロークを巻き込むことを怖れたイブは、彼の忠告を聞かずに一人でリッカーと対峙しますが、そのことでかえってロークとの間が上手く行かなくなり、そこへ追い討ちをかけるように二人目の被害者が出てしまい――。

 ほとんど毎回、事件が起こるのはロークの所有する不動産だったりするのですが、その辺りは、SFですし桁外れの富豪という設定上ギリギリ許される範囲内ではあるかもしれません。
 今回の事件に関しては、伏線がわりと分かり易いですし、途中のミスリーディングの弱さはありますが、犯人の動機面での説得力に関しては問題なく受け入れられるものでした。
 ただ、麻薬組織の大物のリッカーと警官殺しとの関連に関しては少々最後の詰めの部分での書き込みが不足であり、特に結末部分では、関連はあるとはいえ事件を二本立てにしたことで幾分焦点がぼやけてしまって勿体無い気もしました。