難易度の高いバチスタ手術で驚異的な成功率をおさめ続けている、外科医の桐生によって作られた"チーム・バチスタ"で、３例の失敗が相次ぐという事態が起こります。大学病院長の高階から、医療過誤の可能性があるか否かの予備調査を命じられた万年講師の田口は、医療過誤ではなく殺人の可能性に思い至り――。
このミス大賞受賞作ということで、読む前からある程度期待していたリーダビリティに関しては、期待値を大きく上回るものでした。登場人物の書き込みに関しては、脇役の一人に至るまでもがどこかコミカルな魅力を持っていますし、良い意味で「キャラが立っている」と評価出来るでしょう。
また、医療ミステリ的な部分で専門用語などもそれなりに出てくるにも関わらず、堅苦しさは無く、一気に読まされてしまうリーダビリティの高さがあります。
前半は大学病院組織の中で出世コースからは自らドロップアウトした通称"愚痴外来"の田口による人間観察に基づく調査で展開され、後半は高階が別口で厚生労働省の知人に依頼して派遣された"ロジック・モンスター"の白鳥という破天荒な探偵役の登場で一気に展開に弾みがつきます。
ただ、軽妙なテンポとキャラクターの強さはあるものの、ミステリとしては読者が作中に示された手掛かりを踏まえて謎を解くためのプロセスはほとんど省略されていますし、犯人の意外性も弱いという点は指摘出来るでしょう。
それでも、聞取り調査が主の医療ミステリという堅苦しいはずの題材を、スピード感を持って読ませてしまうエンターテインメント性の高さで、十分に楽しめました。
