キャンディス・キャンプ 『裸足の伯爵夫人』

裸足の伯爵夫人
 好きな相手のいる姉の代わりに自分と結婚して欲しいと、名家の令嬢のチャリティは伯爵であるサイモンに直談判をしに自ら出向きます。そして恋愛ではなく実利に基づいた結婚であったはずですが、幸運にも二人は互いに好意を持つことが出来ました。
 ですが、最初の結婚の末に夫人を失ったサイモンを中傷する手紙がチャリティに届けられたり、サイモンを逆恨みする社交界の男がチャリティに近付くなど、二人の結婚には波乱が起こり始めます。

 中傷の手紙にしろその後起こる殺人事件にしろ、犯人を隠そうという意図は全くないのですが、サスペンスはあくまでも「味付け」であることが明解なだけに、その点は作品の疵にはなっていないと言えるでしょう。
 ただ、主人公のチャリティの闊達な個性が光るだけに、悪役である女性の個性はいかにも勧善懲悪の図式の役柄を割り振っただけという印象にとどまる書き込みでしかないのは、些か物足りない点かもしれません。