ダイアナ・ガバルドン 『ジェイミーの墓標1〜3 アウトランダー4〜6』

ジェイミーの墓標〈1〉―アウトランダー〈4〉ジェイミーの墓標〈2〉―アウトランダー〈5〉ジェイミーの墓標〈3〉―アウトランダー〈6〉
 1968年、夫フランクの死後、クレアは19歳になった娘のブリアナを連れて再びスコットランドのハイランド地方を訪れます。そして歴史学者の卵のロジャーに、かつて時間を越えて出会った男達がジャコバイトの乱でどうなったのかを調べて欲しいと頼みます。そして辿り着いた墓石に、ブリアナの父であり、18世紀の世界で夫であったジェイミーの名前を見つけたクレアは泣き崩れ、二人に時を越えた物語を語り始めます。

 前作の結末で、18世紀の世界で生きると決意したはずのクレアが何故現代に戻っていたのかという疑問が3冊かけて明かされるわけですが、如何せん話が長いのがつらいところです。
 前半は、海を越えてフランスへ渡ったジェイミーとクレアの二人が、カローデンの戦いでハイランドの血族たちに悲劇的な結末をもたらすジャコバイトの乱を止めようと、貴族社会の中で画策する物語となります。
 ですが、一度は変えることが可能であると思われた歴史はその勢いを止めることが叶わず、再びクレアとジェイミーはハイランドの地に戻り、スチュアート朝の正当な後継者を僭称するプリンス・チャーリーの下でイングランドとの戦いへと身を投じていくことになります。
 その意味では本作は、前作よりも歴史小説の色彩の強い作品であると同時に、冒頭で提示されている悲劇的な結末へと向かって転がり落ちていく歴史の強い流れに抗いながらも飲み込まれていく物語であると言えるでしょう。
 ラストはまたとんでもない終わり方をして、この長い物語が続いていることを示していますが、正直この3冊の物語はエンターテインメントとしては長過ぎますし、逆に歴史小説としては、歴史を動かした主要な人物である権力者達にあまりスポットライトを当てていないという意味では不十分であるとせざるを得ないでしょう。
 ただ、否応ない歴史の流れと、その中でスポットライトが当たることのない一個人を描いているという点では 十分な力作と言えるかも知れません。