とみなが貴和 『EDGE2 3月の誘拐者』

EDGE2 3月の誘拐者
 死にとりつかれ、少年時代にも自分のふとした欲望で友達を階段から突き落としたこともある男は、普通と「違う」自分を恐れながらも公園で出会った少女を相手に、一線を越すか越さないかの瀬戸際を行き来し続けます。そして同年齢の子供たちとあきらかに「違う」個を持つ孤独な少女は、無くした人形を探すために、自分を連れ去った男と海を目指します。近隣で起こった幼女誘拐事件との関連で、捜査協力に駆り出された天才プロファイラーの大滝練摩は、過去に自分が体験した事件のトラウマと、退行した宗一郎に自分の心の裡を「聞かれる」ことに恐れを抱きつつ、事件に関わっていきます。
 本作では、犯人と少女の危うく奇妙な道程を主として描きながら、前作よりも急激に成長をした宗一郎自身が、10歳程度の知能で人とは「違う」自分の能力と向き合う葛藤、そして陰惨な過去を垣間見せた練摩の葛藤をも上手くオーバーラップさせています。
 前作同様、一線を越えて犯罪へと踏み出してしまう人間の内面を上手く描いていると同時に、シリーズとして主人公らの内面や過去に少しずつ踏み込み、深みを持たせることに成功していると言えるでしょう。