『図書館戦争』『図書館内乱』に続く第3作。
メディア良化委員会による過激な検閲と日々闘う図書隊で、図書特殊部隊に異例ともいえる配属をされた主人公の笠原郁は、前作で同期の手塚の兄にかけられた揺さぶりでまだ動揺を引き摺っています。ですが、メディア良化委員会だけではなく、図書館に出没する卑劣な痴漢との戦いや、自身の昇進試験を乗り越えながら、上官の堂上ともまた一歩距離が近付きます。さらに、郁の実家のある茨城で、地元の美術館との共催で展示される芸術作品が、良化委員会の逆鱗に触れるもので、戦闘部隊の応援を求められ、郁の属する堂上班も茨城へと派遣されますが・・・。
外敵だけではなく、前作でもあった組織内の敵との戦いもあって、物語の方向としてはかなり重い展開になっているはずなのですが、シリアスになり過ぎない登場人物の個性やリーダビリティの高さで、テンポの良い展開の中に重いテーマを上手い具合に描いていると言えるでしょう。
また、1冊に収録した5話を基本的に1話完結の形式を取ることで、比較的軽いラブコメ路線を全面に出した部分を前半に持ってくることで、物語に徐々に入り込むペースと、コミカルな空気から重いテーマにシフトするペースがほぼ同じであるので、上手く読者を惹きつけることに成功しています。
特に真ん中にあたる三話に配置された『ねじれたコトバ』では、本作の設定の中核でもある「言葉に対する検閲」の傲慢さや理不尽さを真正面から取り上げ、その上で四話五話での戦いを描いた辺りは、作品世界や登場人物らの感情にシンパシーを覚えさせる上での大きなポイントになり得るでしょう。
前作『図書館内乱』で作った下地が生かされ、完結に向けて最後の盛り上がりの準備は整ったという、手堅い印象。あと1冊で完結とのことなので、次巻を心待ちにしています。