ビヴァリー・バートン 『星降る夜に、だれかが』

星降る夜に、だれかが
 18歳の時に、義父を殺したという無実の罪で投獄されたリード・コンウェイは、15年の服役の末、仮出所を果たします。母親と妹の住む町へと戻ってきたリードですが、町の誰もが彼を白い目で見る中で自分を冤罪に陥れた真犯人を探そうとします。ですが、かつてリードを刑務所へ遠いやった男の娘のエラ元に卑猥な脅迫状が届き、リードにまた疑いの目が向けられます。エラはリードに直接そのことを問い詰めますが、彼は自分のやったことではないとはっきりと否定します。ごく少数の理解者以外は誰もがリードを疑い、真犯人は再び彼を刑務所へと送り返すことを目論みますが、エラとリードは互いの困難な立場を理解しつつも急速に惹かれ合っていきます。

 複雑に絡み合った人間関係、そしてその中に15年前に殺された被害者が上手い具合に食い込んでいる人物配置は見事。些か複雑にし過ぎた面はありますが、それぞれの登場人物の行動原理や動機には、きちんとした説得力があると言えるでしょう。
 個人的には真犯人の歪んだ心理をさらに掘り下げ、サイコサスペンス的な要素をもっと前面に押し出しても面白かったとは思いますし、徐々に読者に手掛かりを与えて真犯人を浮き彫りにするという面でも、不十分さは否めませんが、とにかく人物相関図が書けるほどに緻密に掘り下げた設定は一応の評価をする点でしょう。
 ただ、最後の大団円は少々やり過ぎ感もありますし、最後の最後で犯人の仕掛けた罠が行き当たりばったりである辺り、ご都合主義を感じさせる弱さがあるのは残念なところ。
 個人的には、どこか邪悪な看護士をもっと上手く使って欲しかったという気もします。