小路幸也 『シー・ラブズ・ユー 東京バンドワゴン』 

シー・ラブズ・ユー―東京バンドワゴン
 堀田家の、カフェが併設された古本屋「東京バンドワゴン」で繰り広げられる、四代同居の家族の物語。
 冬、青とすずみが新婚旅行から帰って来たクリスマスの日、「東京バンドワゴン」には赤ん坊が置き去りにされます。そして近所の下宿に住む学生が売りに来た祖父の形見だという百科事典は、何故か中がくり貫かれていました。
 春、亡き妻のものだったという本を50冊まとめて売りに来た老人が、毎日それを1冊ずつ買い戻している真意とは。
 夏、幽霊を見る小学生と、旅先でとある老婦人から古本を託されて来た曾孫から本を受け取るなり、店主の勘一の様子が何やらおかしくなった理由とは。
 秋、我那人の妻だった秋実の七回忌が営まれようとする中、「東京バンドワゴン」に封印された「呪いの目録」と殺人事件で、妊婦を2人も抱えた一家は大混乱に陥ります。そんな中で、藍子の結婚はどうなるのか。

 最後はやはり我那人の「LOVEだねぇ」で締められる一家の四季の物語は、良い意味で前作と変わらず、綺麗事だろうが現実味が無かろうがそんなことは関係なく、心地良い空気に包まれたものとなっています。
 変わらないようで少しずつ新たな展開を見せる家族の模様に、シリーズとしての充実を見ることの出来た1冊となっていると言うことが出来るかもしれません。
 四季の物語それぞれに、ちょっとした謎がスパイスとして盛り込まれていますが、その解決に至る伏線だとかそんなものよりも、新しい家族を迎えたりして堀田家の面々が少しずつ新しい季節を迎えていく力強い物語の骨組みに「読まされた」作品。
 本作は古めかしいホームドラマのようでいて、それでいながら読者にとっては、廃れず変わらずそこにあって欲しいと望むが故に、決して時代遅れになることのない物語に思えます。