福田栄一 『監禁』

監禁
 リサイクルショップに持ち込まれた事務机の引き出しから、「助けてくれ、カンキンされている 警察にれんらくを」と書かれた紙を発見した美哉は、このメッセージが本物であると一人信じて、机の出所である閉店したスーパーに向かいます。そして、近くの医院に勤める一人の医師が失踪したという話を聞きますが、どうやらその医院では事件をもみ消そうとしている様子が伺えます。さらには、失踪して放火殺人の容疑をかけられた婚約者を探す男、親戚に殺されるかもしれないという危惧を持つ老婆を助ける青年のパートと絡み合いながら、徐々に事件の全容が姿を現します。

 独立した3つの物語が交互に展開しながら、徐々に重なり合い、最後にひとつの物語となっている本作は、派手さはないものの実に堅実でしっかりとした骨組みを持つ物語であると言えるでしょう。
 そして、3つの物語が交互に展開されるからこそ、監禁されている人物が誰なのかは中盤を越えても明確になりません。そして個々の物語は少しずつ重なり合って行くことで、バラバラだった物語が綺麗にひとつの絵を描くさまを堪能出来た作品でした。
 個人的には最後の方で大きくひっくり返るようなサプライズがあっても面白かったかなという気はしますが、これはこれで非常に端正な物語として楽しめました。