ほしおさなえ 『ヘビイチゴ・サナトリウム』

ヘビイチゴ・サナトリウム
 美術部の3年生であったハルナが屋上から飛び降り、その直後から幽霊の噂が囁かれたり、国語教師の宮坂がハルナの死に関係していることをに負わせるメモが生徒の間に回ります。小説家志望の宮坂と、生徒であるハルナの関係、そしてハルナに心酔する女性徒の想いも絡み、一編の小説が幾つもの師の謎を内包しながら姿をあらわします。

 連続して起こる飛び降り、そして少女の思惑に導かれるようにして書き上げられる小説の真相を求めて、一気に物語りに惹き込まれます。
 ただし、事件に疑問を抱いて真相の究明に乗り出すのが、教師である高柳だけではなくハルナらの後輩である海生と双葉らがいるために、事件の解明にいたる道筋が若干煩雑になった印象も受けます。
 宮坂の書いた小説「DOTS」、そして「ヘビイチゴサナトリウム」に繋がる線を前面に出すためには、むしろ高柳視点をメインにすえるなりした方がすっきりと描けたのではないかという気もしました。
 ただ、謎そのものは非常に魅力的に構成されていますし、好みは分かれるでしょうが、悪意に満ちた結末も秀逸。