赤川次郎 『セーラー服と機関銃』

セーラー服と機関銃 (角川文庫)
 父を不慮の事故で亡くしたばかりの泉は、十七歳の女子高生にして、組員僅か四人とはいえ、零細ヤクザの組長になってしまいます。その上父親と一緒に住んでいたマンションには、父の愛人だったマユミという謎の女性までが住み込み、さらには死んだ父が実は麻薬犯罪に関わっていて、そのせいで事故に見せかけて殺されたのではないかという疑惑までが出てきます。父が受け取っていたはずだと誰もが言う「包み」を巡る陰謀と抗争で、泉の周りでは次々と人が殺され、ヤクザ家業を引き受けた彼女の身にも、否応も無しに危機が迫ります。

 おそらく小学生くらいの頃に一度読んでいたはずなのですが、どうも薬師丸ひろ子の「カ・イ・カ・ン」の台詞しか思い浮かばないという状態で、昨年本作の続編が書店に並んだ際に「これってどんな話だっけ?」と一緒に首を傾げた友人から借りた1冊。
 父親の死と謎の「包み」を巡る謎に関しては、決して純粋な謎解きを求めるような性質のものではありませんし、冷静に読めば「そんな馬鹿な」というようなハチャメチャな展開も無きにしも非ずなのですが、とにかくエンターテインメントに徹した作風で、高いリーダビリティを誇る点は評価をすべきところでしょう。
 ヤクザ社会の抗争を描きながらも、決してノワール小説とはならずにエンターテインメント性を重視した、ある種女子高生の冒険活劇として終わっている点が逆に、本作を良くも悪くも何も考えずに純粋に楽しめる娯楽小説たらしめていると言えるでしょう。