海堂尊 『ブラックペアン1988』 講談社

ブラックペアン1988
 1988年5月、東城大学医学部付属病院の外科に講師としてやってきた高階は、「日本の外科手術を変える」新兵器としてある機器を強引に導入します。外科の新人である世良は佐伯教授の指導の下、高階の助手として手術に入ります。ですが、新任講師の高階と佐伯教授はこの新兵器を巡って対立をし、手技は神がかりだか技術偏重で何を考えているのか分からない医師の渡海までもが加わって、患者には見えない熾烈な争いの中で世良は翻弄されます。

 『チーム・バチスタの栄光』から続く東城大学医学部付属病院での医療の現場を舞台としたシリーズですが、本作はシリーズの過去編にあたり、『チーム・バチスタの栄光』では既に病院長であった高階や藤原看護師もまだ若く、シリーズ本編で登場する田口らは、まだ学部の2年生として登場します。本編ではすっかり「狸」となって落ち着いていた高階が「小天狗」と呼ばれ、田口らに近い立ち位置で活躍している作品。
 リーダビリティの高さや癖のある登場人物の配置の上手さは勿論のこと、やはり本作でも描かれる人物の格好良さ、そして中だるみしない物語の疾走感も見事。