有川浩 『図書館革命』

図書館革命

 ある小説を参考にして起こしたのではないかと推測された原発襲撃事件をきっかけに、メディア良化委員会はこれまで以上の勢力の拡大を図ってきます。ターゲットにされた作家の当麻を匿う図書隊ですが、マスコミや世論、そしてこれまでは対立していた手塚兄の「未来企画」までをも動員しますが、戦いは困難を極めます。郁が思いついた起死回生の策に図書隊は打って出ますが、図書隊内部にいながら良化委員会に通じる人間によって、当麻を警護する郁と堂上は孤立することになります。

 「図書館の自由」を守るために、良化委員会と熾烈な戦いを繰り広げてきた、シリーズ四部作の最終巻。
 本作において主人公の郁らが対峙するのは、メディア良化委員会だけではなく「自分には関係ないから」という、一般の人々の無関心でもあります。世論を動かして人々に検閲の危険性を気付かせることが、良化委員会との直接的な戦いにも結び付く話の持って生き方は、明らかにデフォルメされたフィクションとは言え綺麗な流れになっているように思います。
 これまでの三作を経て積み上げられてきた人間関係やそれぞれの勢力の思惑が一気にひとつの方向に集束し、本作において文句の付けようのないラストへと突入します。その意味で、完結編である本書は、良い意味で非常に直線的な勢いのあるストーリーであり、最初の1ページから着地点を目指して走り続けていて、一気に読ませる作品だと言えます。
 郁と堂上のじれったいけれども上手くいくことが分かりきっている関係も、完全に予定調和であるにもかかわらず、中だるみすることなく最後まで読ませるキャラクターの勢いがあり、好感を持てるものです。
 展開のスピーディさ、キャラクターの力、読後感の良さ、リーダビリティの高さなど、総じて本作は、エンターテインメントとしての高いレベルにあると評価出来るでしょう。