有川浩 『別冊図書館戦争 Ⅰ』

別冊図書館戦争 1 (1)
 当麻事件後、入院中の堂上のもとへ通いながら周りが恥ずかしくなるようなラブラブっぷりを披露し、そして隊に復帰した堂上とひとつひとつ「恋人」のステップを上がっていく、二十六歳純粋培養乙女・茨城県産の笠原郁の物語。帯にある通りの「激甘注意」。

 構成要素としては、シリーズ本編のテーマでもある「表現の自由」や「差別」を盛り込みつつも、完全に「恋愛小説」。しかも特に障害らしい障害もない幸せ一杯のカップルのその後の姿だというのに、一冊通してニヤニヤと笑わせつつもしっかり読ませるだけの筆力は大したもの。
 郁の「純粋培養乙女」っぷりに本人達は山あり谷ありの恋愛模様なのでしょうが、読み終えて思い返してみれば驚くほどにこの二人には障害がありません。にも関わらず、最初から最後まで「面白い」と感じさせられる1冊でした。
 ベタ甘恋愛小説ということで、好き嫌いはあるでしょうが、シリーズ登場人物に愛着を持つ読者であればほぼ確実に、主人公二人の幸せぶりに笑えることでしょう。
 しかし堂上があそこまで甘くなるとは…。