コリン・ホルト・ソーヤー 『氷の女王が死んだ』 

氷の女王が死んだ (創元推理文庫)
 高級老人ホーム<海の上のカムデン>に新しくやってきたエイミー・キンゼスは、高慢な上に誰彼となく相手を傷つけて楽しむような底意地の悪さで、あっという間に<海の上のカムデン>一の嫌われ者になります。ですが、だからといってエイミーを体操用の棍棒で殴り殺すほどの動機を持つ容疑者とは?

 海の上のカムデン・シリーズの第二弾。
 鼻持ちならない被害者や、嫌われ者の支配人、アルコール中毒の老人やヘボ詩人など、本作でも個性豊かな登場人物は枚挙に暇がありません。勿論主人公のアンジェラとキャレドニアの二人も、不謹慎にもやる気満々で事件に首を突っ込んでは彼女らを「友人」と言って憚らない好人物のマーティネス警部補をヒヤヒヤさせたり、飲んだくれの老人グローガンを何とか更生させようとお節介を焼いたり、事件の容疑者でもある室内装飾家に心から同情してやったりと、本作においても実に人間味が溢れています。
 図らずも彼女らが言うように、「年を取ったからと言って人間真っ白になるわけではない」との言葉通り、主人公のアンジェラですらも傍迷惑な性質を見せたりしますが、それがまた愛すべき欠点として良くも悪くも人間的な人物造詣を形成しており、人生の終焉を見据えた登場人物たちが多いからこその味となっているようにも思えます。
 ミステリとして言えば、犯人に結び付く手掛かりの提示は必ずしも十分とは言えない部分もあり、結末部においてマーティネス警部補によって全貌が語られてようやく説明がつけられる辺り、出来れば物語の展開の中に織り交ぜてあれば…という気もしなくはありません。
 ただそれも、自分の思い込みで暴走するパワフルな老女という探偵役の個性付けの上でのことではあるので、物語としてのマイナス要因になってはいないと言えるでしょう。