石崎幸二 『復讐者の棺』

復讐者の棺 (講談社ノベルス イN- 5)
 二人の女子高生が部室を占拠したいがためという動機で存在するミステリィ研究会の特別顧問の石崎は、件の問題児のミリアとユリ、そして前の事件の関係者の仁美、知り合いの女性刑事の斉藤らとともに、伊豆沖の孤島でまだ開業していないテーマパークを見学に行くことになります。ですがその島で一人が人質として捕らえられ、その人物の安全を保証する代りに復讐の邪魔をするなという脅迫がなされます。そして発見される死体。事件の背後には、10年前に惨殺されたその会社の前社長の事件があるらしいことがにおわされます。

 女子高生のミリアとユリのコンビと、ミステリオタクのサラリーマン石崎の三人が、ボケとツッコミをしながら事件を解決するシリーズの第5弾。
 シリーズとしては前作からかなり間が空いたということもあるのでしょうが、どうも我儘で頭の悪い会話ばかりをする女子高生二人と、しょうのないミステリオタクの情けない男の石崎という、メインの三人のキャラクターの会話が上滑りしている印象。このユーモアセンスが駄目ならばもう合わないと諦めるしかないという気もしますが、それを差し引いても本筋とは無関係な上に、雰囲気作りにも寄与していない会話部分が多過ぎる気がします。
 ミステリとしては、オーソドックスなトリックを基本に忠実に扱うという著者の良さでもあり、またあまりにも基本に忠実過ぎて新しさがないという欠点でもある持ち味が顕著に出ている作品と言えるでしょう。
 おそらくは連続殺人の一人目の被害者の段階で、使われるトリックの大筋は想像出来ますし、ヒントとなる部分も非常に直球な書き方で提示されているので、ミステリとしての難度は低いものとなってしまっています。
 勿論、基本に忠実であるが故にしっかりとしたトリックと構成であるのは事実ですが、犯人の条件提示に多数いるはずの登場人物が揃って簡単に従ってしまう辺りで、物語内のリアリティの部分での弱さも感じないではありません。