瑞山いつき 『マギの魔法使い』

マギの魔法使い―エメラルドは逃亡中! (角川ビーンズ文庫 44-11)マギの魔法使い―国王は求婚中! (角川ビーンズ文庫 (BB44-12))マギの魔法使い  科学者は誘惑中! (角川ビーンズ文庫 44-13)

 突然空から異国へ連れ去られた白魔女見習いの少女エメラルドは、この世界に重大な力を及ぼすウィザードに寵愛される「宝石」と呼ばれる血筋を持つことを知らされます。次代のウィザード候補でありながらそれを良しとしない「余所者のカカシ」の名を名乗るウォレス、ウォレスとともにマギを目指す不死身の傭兵王と称されるハロルド、エメラルドを連れ去ろうとした秘密組織<真実の星>とかかわりのある少年トト、亜人類の一族の地位向上のために「宝石」とウィザードに関わろうとするラグナ、そして黒の魔女としての姿を持ち「宝石」に異常な執着を持つウィザード候補のアルフェッカ。彼らに加え、様々な立場の人間がそれぞれの思惑で「宝石」を手にしようと彼女に関わってくる中で、この事態を打開するべくウィザードのいるマギへと向かうことになります。

 オズの魔法使いをモチーフにしたファンタジー
 立派な白魔女修行中の主人公のエメラルドは、恋愛にも憧憬を抱く普通の女の子でありたいだけであるのに、血筋によって「宝石」として様々な人や勢力から狙われることになります。
 本作では、彼女と共に旅をして「仲間」となっている人物達の、自らの立場や思惑で「宝石」としてのエメラルドを欲し(或いは嫌悪し)ていると同時に、個人として彼女に接するうちに生まれる感情が複雑に入り混じる辺りが面白いところ。
 登場人物たちの設定や物語の端々に、オズの魔法使いの世界を探すことが出来る辺りも楽しめます。