山口雅也 『PLAY プレイ』

PLAY プレイ (講談社ノベルス ヤL- 8)
■優秀な外科医としての名声を持つ球磨は、実業家の妻や出来の悪い娘の前では存在感の薄い夫であり父親でした。ぬいぐるみの愛好家として知られる球磨の、家族へ向けられる愛情とは(『ぬいのファミリー』)。
■息子が猿になってしまった――ガンジス流域で昔ながらの葬儀を行なっている町へ家族で行った時に、拾ってきたゲームをして以来、息子の様子がおかしかったことが分かります。<蛇と梯子>というそのボードゲームを持って、一家で精神科医のところに相談に行くのですが…(『蛇と梯子』)。
■ポリバケツの中から発見された死体は、インターネットのサークルで行なわれている隠れ鬼の最中に殺された参加者であることが分かります。引き篭もりを支援するNPOの活動の一環として行なわれているこのゲームの最中、何があったのか(『黄昏時に鬼たちは』)。
■家族の中で上手くやっていけない少年は、家のお金を盗んで実在の人物を取り込んでスナッフ・ゲームとして改造されるTVゲームを手に入れます。気に入らない行動を取る家族を惨殺するゲームを楽しむ少年は…(『ゲームの終わり/始まり』)。

 それぞれ、ぬいぐるみ、ボードゲーム、鬼ごっこ、TVゲームという、遊戯と家族をテーマにした短編集。
 『黄昏時に鬼たちは』においては著者らしいミステリ要素が見られるものの、ミステリとしてのみ読めば、あくまでも一定のレベルには達していても、特筆すべきものはさほど見られません。
 むしろ、家族と「遊び」を絡めた読み物として、良い意味で「後味の悪さ」を演出し、ホラーテイストも取り入れた、ブラックな作品集と言うことは出来るでしょう。
 日常と妄想が交錯する畸形の世界観が息づいているという部分で、非常に著者らしい味の出た1冊。