アンソニー・ホロヴィッツ 『ポイントブランク』

ポイントブランク (集英社文庫)
 もう二度とスパイの仕事になど関わるつもりがなかったアレックスですが、MI6の作戦局長の知人だった富豪の死の鍵を握ると思われる息子がいる、フランスの全寮制の学校への潜入を命じられてしまいます。

 毎回登場する、007顔負けの特殊な秘密兵器が、いつどの場面で使われるのかというのは、シリーズでのひとつの楽しみでしょうし、前作で訓練中を共にした"ウルフ"との再会なども見どころのひとつとなっているとともに、アクションシーンも手馴れた感じでスピード感のある話運びは変わらず、といったところ。
 ただ、アレックス個人が正義感から行動する→それがMI6から呼び出されるきっかけになる→潜入のための訓練→潜入という流れが前作とほぼ同じであり、そのままパターン化している分、シリーズとして今後展開する上ではマンネリ化しそうな予感が、二作目にして既に出て来ています。
 アレックスの14歳の少年としての未成熟さや大人社会の歯車に組み込まれることへのフラストレーションなど、それなりの読ませどころはあるものの、やはりノベライズ作品のような薄い印象がしてしまう気がするのは否めません。
 前作における殺し屋の男や、前作に引き続いて登場したウルフなど、アクの強い名脇役足りうる人物が揃っているだけに、単にテンポ良く話の流れを追っただけで終わってしまうのは勿体ない気がしました。
 巻末の解説ではネタバレありなので一応注意。