恩田陸 『六月の夜と昼のあわいに』

六月の夜と昼のあわいに
 全7編には、それぞれの冒頭に、フランス文学者杉本秀太郎の詩・俳句・短歌と現代画家の絵が冠され、記憶の奥底にある言葉から想起されるイメージを綴った、恩田陸版「夢十夜」的短編集。生まれ育つ環境という抗えない運命によって狂わされる『窯変・田久保順子』、男の子だけが特別扱いされる慣習を羨望する少女が見た光景を描く『夜を遡る』など、全7編。

 一つ一つの短編は、「物語」に発展する前の「恩田陸の断片」とでも言うべきものであり、純粋に言葉とイメージのみを追及した感のある、作品群。
 文章と、それが紡ぎだすイメージが見せる仄暗い幻想が美しい作品集。