ひょんなことでジュディという少女を助けたナンシーは、大おばたちの愛情を受けて成長するジュディの家が、彼女のこれからを保証するためには経済的な不安を抱えていることを知ります。そして、ジュディやその大おば、他にも何人もの人のために、自分の遺産を遺そうとしていた金持ちの老人がいたことをナンシーは知りますが、既に故人となっていたその老人の遺産は、旧い遺言状によって、いけすかないトプハム家に独り占めにされようとしていました。ナンシーは、あるはずの新しい遺言状を見つけ、困っている人たちをことを決意します。
本作は、18歳の少女探偵ナンシー・ドルーが知恵と勇気で事件を解決する児童向けの物語であり、日本で言えば、少年探偵団の小林君の物語にでも該当するのでしょう。
その意味で本作は、リアリティや人間の掘り下げなどよりも、徹底した勧善懲悪の構図が優先され、悪人は徹底的に悪人として描かれ、主人公の正義は絶対的であるという、非常に明解な世界が構築されています。
児童文学とはいえ、些か単純すぎるこの構図を受け容れられるか否かの点において、本作はある程度読者を選ぶ傾向はあるでしょうが、主人公が活躍する冒険譚としては、良い意味で非常にシンプルで分かりやすい作品世界がそこにはあります。
