成南電気工科大学に入学して機研(機械制御研究部)に入部することになった本山と池谷をはじめとする一回生たちは、"成南大のユナ・ボマー上野"と、"苗字を一文字隠した大神"(大魔人)と称される二人の危険人物の二回生の先輩の下で、様々な行事にあたることになります。新入部員獲得大作戦、大魔人の恋の顛末、そして後に伝説となる学園祭の模擬店。本気で馬鹿をする理系男子の危険な青春を、社会人となった本山は妻に語ります。
学生時代だからこその無茶なまでの楽しさが本作の中にはあり、同時にそこから離れた場所で輝いていた「あの頃」を懐かしむ、どこかセンチメンタルなものをも併せ持つ作品。
本作においてもいかにも著者らしい、枠にはまらない無茶苦茶さが爽快な登場人物と、全力体当たりの行動が生み出す物語の面白さが十二分に味わえます。
そして、そんな良い意味で無軌道な日々の楽しさは、社会人になった主人公の視点を盛り込むことで、自分の一番楽しかった「学生時代」を振り返る懐かしさと同時に、その時代を抜けてしまったことを寂しく思う気持ちをも抉り出します。
ある程度の年齢になれば誰しもが多かれ少なかれ持つようなそんな気持ちを物語に加えることで、物語の中の登場人物たちへの読者の共感をも引き出していると言えるでしょう。
理屈無しの面白さと爽やかさ、そして苦さとそれを含んでなお爽やかであり続ける、著者らしさに満ちた作品でした。