高校生活にも徐々に慣れてきた泉水子は、夏休み前のテストも終え、新たに出来た友人である真響に誘われ、彼女たち三つ子の故郷である戸隠へ生徒会の合宿をかねて出かけることになります。生まれて初めて「友達の家に泊まりに行く」「合宿に参加する」という体験に心を弾ませる泉水子ですが、生徒会に対して、そして泉水子とそのパートナーの相良深雪への真響の思惑が、様々な問題を引き起こします。そんな中、真響の弟である真夏の愛馬に起こった異変が、彼ら三つ子の関係を大きくゆるがせることになります。
主人公の泉水子の性格を反映してか、3冊目に至っても物語の流れる方向がまだはっきりと見えて来ないものの、前作よりも明確にファンタジー小説としての色合いを見せることになった第3作。
泉水子の中にいる「姫神」と、彼女らを守る「山伏」。そして源流は同じものでありながらも歴史の中で別の流れを歩むことになった真響たちの一派。登場人物たちは、それぞれの立場での思惑により振舞うと同時に、一個人として家族や友人のために行動します。一見両立しないかに思えるこの二つの行動原理が、実際にがぶつかり合うことなく、ごく自然な形で登場人物の動きとなる辺りもまた、本作の読みどころのひとつかもしれません。
シリーズ全体としてはややスローペース過ぎる印象も皆無ではありませんが、ラスト近くなって現れる泉水子の母親の意味深な言葉など、そろそろ物語の核心に近付く展開が期待されるところ。