ケイト・キングズバリー『ペニーフット・ホテル受難の日』

ペニーフット・ホテル受難の日 (創元推理文庫)
 夫を亡くし、上流階級の人々の集うペニーフット・ホテルを切り盛りする女主人となったセシリーですが、宿泊客の一人がホテルの屋上から落ちて死んだと思わしき事件が起こってしまいます。セシリーはホテルの支配人のバクスターとともに警察が来るまでの間、ホテルの評判を守るために手を尽くしますが、そのうちにこの事件が殺人である可能性が高いことに気付いてしまいます。

 エドワード王時代の上流階級の人々が集う、小さな海辺の町のホテルを舞台にしたシリーズの第一作。エキセントリックなホテル関係者や高慢で扱いづらい客など、個性的な登場人物が魅力的に描かれる作品。
 事件そのものに関しては、犯人の意外性や謎の難易度の面からすると、さほどのサプライズはありませんが、ユーモラスに描かれる登場人物の個性や、丁寧な伏線といった作風は、好感の持てるものと言えるでしょう。