牧野修 『傀儡后』

傀儡后 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

 隕石落下によって壊滅的な打撃を受け、一変した社会。ネット中毒者たちの間に広がるネイキッド・スキンという怪しげなドラッグ、皮膚がゼリー化する麗腐病に犯された人々。世界が変容する中暗躍する、天才的なカリスマ七道桂男、そして「傀儡后」。

 ホラー小説というジャンルでの活躍がある著者だからこそ描けた一作ともいえる作品。それは、SFという枠組みの中で描かれるフェティシズムに満ちたダークファンタジーであり、デカダンスな空気が終始一貫して流れている一作。
 終盤になると、やや乱暴ともいえるまとめ方で結末へと雪崩れこんでいきます。場面と視点を変えてこれでもかと執拗に描かれる皮膚感覚のあり方やら、意味ありげな人物の配置やらは、むしろこの結末からもう一度物語を遡り、読者自身の中で再構築することで確たる世界観が伝わるのかもしれません。
 ただし、作品の傾向的に、かなり読者を選ぶ作品であるのは確か。