美奈川護 『特急便ガール!』

特急便ガール! (メディアワークス文庫)
 上司を殴って会社を辞めることになった陶子は、元同僚の紹介でバイク便を扱う小さな会社へ面接を受けに行くことになります。行った先の「バイク便ユーサービス」では業務内容が思っていたものと違っていたり、人を食った社長如月や宣伝部長の大谷さん(オカメインコ)を目にして不安に思い、引いてしまった陶子ですが、口の悪いライダーの菅野や社長の如月に乗せられて負けん気を起こし、ついつい実地の入社試験を受ける羽目になってしまいます。長距離の届け先に荷物の手持ちで運ぶ「ハンドキャリー便」を担当することになった陶子は、ある不思議な力が身についてしまいますが…。

 キャラクター造詣など有川浩的なテイストは強いものの、それだけに勢いとリーダビリティ、広く受け容れられるストーリー展開など兼ね備えた一作。
 いわゆる特殊能力物や超能力物というよりは、そうしたものはあくまでも物語の一要素として扱われており、読む上でさほどその「特殊さ」が気になることはありません。そして、主人公のその「能力」の物語上での必然性と、それが中盤以降で果たす役割が絶妙。
 本作は、自ら厳しい道を選択してしまいながらも、とにかく主人公はひたすら前へ向かって走り続ける物語であり、物語のその直球さが魅力となっていると言えるでしょう。
 本作は今後続く物語の幕開けとしても読めるので、続編があるならそちらも期待したいところ。