綾辻行人 『深泥丘奇談・続』

深泥丘奇談・続 (幽ブックス)
 深泥丘に妻と住み、原因不明の頭痛で深泥丘病院に定期的に通院する職業作家の「私」。この土地で生まれ育ったはずなのに、妻や周りの人が当然のように知っている風習を知らなかったりする主人公が遭遇する、様々な奇妙なものごとが描かれる連作短編集の第二集。

 どこか曖昧な主人公の記憶と、そこに付け込むような周囲の人々や土地の奇妙さがもたらす違和感が秀逸。
 前作同様、主人公の姿が著者と重なるような、確信犯的な物語構造が生かされ、現実と虚構との境があやふやになるような、どこか頼りない作中の「現実感」が独特の風合いを生み出していると言えるでしょう。怪談ともホラーともつかない、深泥丘という架空の土地の作り込みによる、その土地の土着的な「何か」が常に感じさせられるような物語世界が本作には確立されています。。
 B級臭のするホラー映画ネタや、著者ならではのロジックの片鱗が見える『切断』も面白いです。