ナンシー・アサートン 『ディミティおばさまと村の探偵 優しい幽霊6』

ディミティおばさまと村の探偵 優しい幽霊6 (RHブックス・プラス)

 アメリカへ行って留守にしている間、フィンチの村では3ヶ月前に越してきたばかりの老女が殺されるという事件が起こっていたことをロリは知ります。その殺人の嫌疑が、大事な友人のキットに降りかかってきたことを知ったロリは、憤慨しながら牧師の甥のニコラスとともに、真相を探り出そうとします。調べるうちに、多くの住人が被害者に恨みを持つ理由が明らかになってきますが、一緒に調査をするニコラスに心が揺れるロリの噂話が村で広まります。

 癖のある住人たちそれぞれの、思いもよらなかった秘めたエピソードが、ひとつの殺人事件によって明らかにされるという、コージーミステリ特有の空気が色濃く出ている一作。そうした部分で本作は、シリーズ作品としてある程度確立されており、そこに登場する癖のある登場人物たちが魅力的だからこその作品となっています。
 事件の真相そのものは、やや脱力もののオチという感じもないわけではありませんが、そこに行き着くまでの過程で描かれる、容疑者たちの隠された動機(となり得るエピソード)や、事件を捜査するという形式で間接的に描かれる、被害者の邪悪さを秘めた人間性の描き方などが何とも面白い一冊でした。