J・D・ロブ 『殺しはオペラを聞きながら イヴ&ローク26』

殺しはオペラを聞きながら イヴ&ローク26

 残虐な拷問を受け、そして死ぬまでの時間を記した遺体が発見されます。それは、かつてイブがフィーニーの相棒として捜査をしていた時に取り逃がした連続殺人犯が、NYに戻ってきたことを意味していました。彼女の夫であるロークの経営する企業に雇われた女性ばかりが拉致され、拷問の末に無残な遺体となって発見される事件を、経験を積んで今度は主任捜査官となったイブは止めることができるのか。

 解決出来なかった事件というしこりが、イブだけではなく、当時は主任捜査官であったフィーニーをはじめ、登場する多くの警官たちに残っている因縁の犯人が、今作では相手となっています。
 本作では、多くの事件を経て一人前の警官となったイブが指揮を取る中で、過去にその犯人と対峙した時には自身が主任捜査官であったという矜持のあるフィーニーと、現時点での主任捜査官であるイブとの衝突なども描かれることになります。
 イブをはじめとする捜査陣が被害者に残された時間との闘いの中で消耗を強いられる本作では、一つ一つの手掛かりが詳細に分析され、着実に犯人へと迫る過程が実に丁寧に描かれます。その中で未知の犯罪者が、実体を持った一人の人間として次第に浮き彫りになっていく過程もまた、本作での見どころと言えるでしょう。