『柳田國男と遠野物語 日本および日本人の原風景』

柳田國男と遠野物語~日本および日本人の原風景~(タウンムック)
 日本における民俗学の道を作ったとされる、柳田國男の偉業を、『遠野物語』を軸にして網羅し、丁寧に解説した雑誌の特集号的な一冊。本誌の中には、様々な問題を抱える東日本大震災後の日本を、柳田國男が見ていた「日本」をもう一度見直すことで、今後採るべき道の模索を試みたという視点も盛り込まれています。
 本誌は、柳田國男の生い立ちから経歴、「経世済民」の思想と農政学、遠野物語語り部たる佐々木喜善らとの出会いと、そこから拓ける民俗学の世界など、携わった各方面の仕事が俯瞰できる、完全保存版の読み応え有るものとなっています。
 さらには、柳田が日本土着の民俗をセンセーショナルに記録した『遠野物語』から、晩年の日本人のルーツにまで言及した『海上の道』に至るまでの功績を見る時、彼に影響を与え、あるいは彼が折口信夫らへと影響を与えたことで日本の民俗学が辿った道が、分かり易く概観出来ます。
 112ページの中に、一人の人間がこれだけ国の根幹に関わる偉業を成し遂げたという意味で、柳田國男の圧倒的な巨人ぶりが伺えます。