P・G・ウッドハウス 『ドローンズ・クラブの英傑伝』

ドローンズ・クラブの英傑伝 (文春文庫)
 ロンドンの富裕層の紳士たちが集う名門「ドローンズ・クラブ」。二人の男がそれぞれ意中の女性にアピールすべく、一流の店で帽子を仕立ててもらったものの、出来上がった帽子が「合っていない」という相手の女性と喧嘩別れをする顛末。いつも最初は好きになった女性から好意を持たれるものの、その後の運の悪さと行動の空回りで上手くいかないフレディ・ウィッジョンの話。結婚を反対され、遠くへ追いやられた男が、ひょんなことで亡霊になることで結婚にこぎつけた事の真相。何かと問題を起こしてばかりでいつも金欠のビンゴ・リトルが、妻となった女性の紹介で子ども雑誌の編集長の座につく話。ドローンズ・クラブで余興を演じる二人組の芸人バーミーとポンゴが乗り越えた試練の話。肥満の叔父さんがダイエットに取り組んでいる中、肥満の度合いを競う体重コンテストに叔父さんを狩りだそうという企ての顛末。これらクラブのメンバーたちの物語12編に加えて、ちょっといい話の「マック亭のロマンスマック」加えた13編を収録した短編集。

 ジーヴズ・シリーズに出てきた、主人公バーティや彼の友人ビンゴ・リトルをはじめとする、富裕層の紳士が集まるドローンズ・クラブの面々が巻き起こす騒動をコミカルに描く短編集。
 ジーヴズ・シリーズ内の愛すべき存在ビンゴ・リトルは、惚れっぽくてギャンブル好きで安易な方へと流されやすいがために問題ばかりを持ち込んでは、バーティを介して敏腕執事のジーヴズに相談し、何とか収まるべきところへ収まっている、けれども懲りることを知らない、という役どころにありました。本書においてはビンゴの憎めない駄目さ加減はそのままでも、失態を何とか取り繕うために奔走するうち、信じられないほどの幸運に恵まれることとなっており、ある意味彼は、最強のキャラクターとも言えるかもしれません。
 さらには、ビンゴのように運に救われることなく、毎回酷い目に会うフィレディなどを含め、類は友を呼ぶとしか言いようのないドローンズ・クラブの面々の、愛すべき駄目っぷりが楽しいドタバタ劇が楽しい作品集。